記念写真 2007.10.04

 マッティオは眉間にタテ皺を寄せて目の前の三人組を凝視した。
 右から順にボバング、サリナス、新伍の横並び状態。まるで色鉛筆を大・中・小と長さ順に並べたみたいで結構笑える。

 それはともかく。マッティオはむすっとした表情のまま新伍をにらみつけた。

「お前らなんの用だ?」
「せっかくのオフ日だし、ひさしぶりにマッティオの顔でも見に行こうかなーって」

 あいにくそんなタワゴトに引っかかるようなマッティオではない。

「ウソつけ。じゃあそのガイドブックはなんだ?」

 新伍のナップサックから半分はみ出した大判の雑誌を冷たい視線で示した。
 タイトルは“ 最新版ヴェローナ食べ歩きドルチェガイド ”。
 どう考えてもただの食い歩きツアーだろ、お前ら。

 なのに新伍ときたら悪びれもせずパッと顔を輝かせて、

「そーだ。ねえねえマッティオ。パンドーロの美味しい店どこか知ってる〜?」
「やっぱり観光目的じゃねーか!」

 最初からわかっていたとはいえ、面と向かってハッキリ肯定されると無性に腹立たしい。

 ちなみにパンドーロとはヴェローナ名物の発酵菓子のこと。ミラノのパネトーネに似てるようで案外似てない。なお食べる直前に粉砂糖をかけるとなんかイイ。

 パネトーネ至上主義のミラノの実家の母に知られたらフライパンで殴られそうだが、今ではすっかりパンドーロ派と化したマッティオだった。

 遠くに見える観光客の集団を指さしてボバングが言った。

「シンゴ。なんか向こうで人だかりしてるよ」
「よーし、じゃ行くぞボバング!」
「うん、行こう行こう!」

 会話だけ聞くと幼稚園児としか思えない。
 新伍とボバングは嬉々として即断即決するや、カペッロ通りを大はしゃぎで駆け出した。

 遠ざかる二人の背中を見送りながらマッティオが頭を掻く。

「ったく一方的に呼びつけておいてあいつらは〜!」
「……朝イチで叩き起こされたかと思えば朝飯もそこそこに問答無用でハンドル握らされて、アルバから長距離ノンストップ高速走行を強要されたオレよりマシだろ」

 サリナスは端正な顔に疲労の色を滲ませてため息をついた。

 こいつもとことん運のパラメーターが低い男だよな。
 まあそこら辺はオレもヒトのこと言えた立場じゃないが。
 サリナスと並んで通りを歩きながら、マッティオは内心つぶやいた。

 北イタリアにいる遠縁の親戚を訪ねて遠路はるばるブラジルからやってきたそうだが、道でばったり新伍なんかに遭遇してしまったのが運の尽き。挨拶もそこそこにナポリのおばちゃん顔負けのハイテンションで強引に押しまくられ、気がついたらアルバのゴールマウスに立たされていたという。

 そう、天才GKサリナスはスカした外見に似合わず、NOと言えないブラジル人だった。人が良すぎるのも考え物だ。特にここイタリアでは致命的。カモ以外の何物でもない。

「そもそもアオイが運転すりゃいいじゃないか。あいつ免許持ってんだろ」

 それを聞いた途端、マッティオの表情が一瞬固まった。

「……それだけはやめといた方がいいぜ」
「なんでだよ?」

 当然ながらサリナスが怪訝そうに聞き返す。
 マッティオはやれやれといった風に肩をすくめた。

「一般道ならまだしも高速でシンゴに運転任せるだって? 自殺願望でもあんのかお前。パッと見ホニャララ可愛いコザルがハンドル握った途端、インデペンデンスデイの侵略宇宙人に化けるんだぜ。タチが悪いったらありゃしない」
「はァ? なんだその喩えは」
「ま、どうするかはお前の自由だけどな。オレの知ったこっちゃねえ」

 突き放したように言い捨て、少し歩調を早めた。

 新伍が運転適性診断チェックを受けたなら、それがイタリア基準であったとしても間違いなくデンジャラスゾーンの域に達するだろう。

 決して運転がヘタなのではない。むしろ上手い方だと思う。
 ハンドルを握ると同時に、むき出しの闘争本能が臨界点を突破しなければの話だが。

「おーいマッティオ! こっちこっち〜!」

 なにげなく声のする方角に目をやってぎょっとする。

「うわ…、よりにもよってあそこかよ」

 マッティオは顔をしかめて煉瓦造りの古びた館を眺めた。
 門のアーチの向こう側で新伍がやたら豪快に手を振っている。

 まずは複雑な表情のマッティオ、続いて中庭にひしめく観光客の団体と順繰りに視線を投げて、サリナスが首を傾げた。

「見たところ人気観光スポットみたいだが、なにか問題でもあるのか?」
「あるに決まってんだろ。ここはジュリエッタの家だっつーの」

 場所はヴェローナ、蔦の絡まる中庭のバルコニーときたら思いつくのはアレしかない。

『ああ、ロミオ、ロミオ、どうしてあなたはロミオなの?』

 ヴェローナは、かのシェークスピアの戯曲『ロミオとジュリエット』の舞台なのだ。

 今ではジュリエッタの家は街の観光スポットのひとつと化し、世界中からカップル客がわんさか詰めかける縁結びの名所となっている。加えて中庭のジュリエッタの銅像に願掛けすると恋が成就するという怪しげな伝説つき。

「――てなわけでカノジョと仲良く二人連れならまだしも、大の男が四人も雁首そろえて行ったって楽しくもなんもねえぞ」

 マッティオのテキトーな解説に耳を傾けていたサリナスが、おもむろに口を開いた。

「ああ。生きるか死ぬかグダグダ悩むアレか」
「ちょっと待て、そりゃ作品違いのデンマーク憂鬱王子だ」
「デンマーク? ならギロッポンか」
「はァ? なんだそりゃ」

 耳慣れぬ“ギロッポン”という単語にマッティオは首を傾げた。

 はて、『ハムレット』の登場人物にギロッポンなんてヤツいたっけか?
 確かあの話はレアチーズだのホウレンソーだの食材っぽい名前の連中が多かった気がする。主人公自体ハムだしな。大臣の名前聞く度にモルタデッラ(ボローニャソーセージ)思い出して腹減ってくるのはどうにかならんものか。

 マッティオが真顔でくだらないことを考え込んでいるなか、サリナスは淡々と続けた。

「日本代表との親善試合の間じゅう、デンマークのツートップが執拗に連呼してたって話だが。常識的に考えてヤツらの秘密の作戦サインかなんかじゃないのか? ま、ボバングの言うことだし、いろいろ怪しい部分もあるけどな」
「おいおい。なんか話がどんどんズレてってねえ?」

 こんな調子でとりとめのない会話をだらだら続けながら歩いていると、気がついたら目的地の門前だった。アーチをくぐって中庭に入り、周囲をざっと見渡す。

 並み居る観光客の中でもひときわ目立つ大小デコボココンビに目を留めた。
 例のジュリエッタ像の前で妙に真剣な顔で話し込んでいる。

 マッティオがなにげなく歩み寄ったその時、

「ねえシンゴ。なんでジュリエッタは“ どうしてあなたはロミオなの? ”なんて訊くのかなあ?」

「んー? ちょっくら身近に置き換えてシミュレートしてみる。………例えばジェンティーレのヤツがエラソーに『なんでお前はシンゴなんだ?』って訊くだろ。で、おれは『へ? なんでって言われても、特に理由とかないんだけど。物心ついて以来ずっと新伍だぜ、おれ』……あれ?」

 新伍はしばし考え込んでから顔を上げ、

「自己存在を明確に証明するのってすっごく時間掛かりそうだし、とりあえず本人確認取れたらいいんじゃない?」
「ふーん。それって滞在許可証とか身分証を見せたらいいかなあ?」
「顔写真と現住所付きのほうがよくない? 運転免許証なんかどうだろ」

 思わず立ちくらみがしたのは決して眩しい真夏の太陽のせいじゃない。

 お前らそんなこと真剣に話し合うな。
 あのシーンでロミオがジュリエッタに運転免許証なんか提示したら、頭の上にグランドピアノ投げ落とされたって文句言えた義理じゃないと思う。
 ついでに勝手に引き合いに出されたジェンティーレが気の毒すぎる。

「……ホント、呆れるほどロマンチシズムとか詩的情緒に縁遠い連中だよな」

 マッティオのつぶやきが聞こえたのか、新伍がひょっこりふり返った。

「あ、マッティオ。遅いなーもぉ。こっちだよ!」

 新伍に左腕をぐいぐい引っ張られ、なかば強引に銅像の前へ連れて行かれる。あれこれ言ってもムダなのはわかっていたので、とりあえず好きなようにさせておいた。

「マッティオ、あと半歩右側によってくんない? うん、そこでいいや」
「へいへい、わーったわーった…って………え?」

 しばらく言われるがままに立ち位置を調整されているうちに、ふと気づく。
 ジュリエッタ像を背景にマッティオは左、新伍は右にポジショニング。しかも左腕を新伍にがっちり組まれたカタチで。なんだこの教会の新郎新婦みたいな画面構成は。

 マッティオの疑いに満ちた視線などものともせず、新伍はボバングに向かって脳天気に合図した。

「よーしボバング、準備はいい?」
「ボクのほうはいつでもOKさ!」

 ボバングは負けず劣らず脳天気に手を振った。
 こいつ、いつのまに移動したのやら銅像から5メートルほど離れた位置に立ち、携帯電話を握りしめた手をぶんぶん振り回している。

――携帯電話?

 かすかな疑念が大いなる確信へと華麗にシフトチェンジする。
 マッティオは新伍を静かに見据えた。

「おいシンゴ。こりゃいったいなんの真似だ?」
「えー? 観光地といえばやっぱ原住民と記念撮影でしょ」

 新伍はきっぱり言い切って得意げに胸を張る。

――原住民と記念撮影?

 マッティオはあまりの言い草に絶句した。その言葉をぼんやりと脳裏で反芻しているうちに、ハッとわれに返った。

「なにィ !? ちょっと待て今マジここでか――― !? その前に原住民たぁなんだ !? オレは南の島のポレポレ首狩り族か !?」
「ゴメンゴメン。地元民だった地元民」
「地元民でもねえ! オレんちは先祖代々ミラネーゼだっつーの! それ以前に男同士で腕組んでツーショット写真なんか死んでもお断りだ―― !!」

 ジュリエッタ像の前で野郎二人が記念写真だと?
 ほぼ確実にゲイのカップルと勘違いされるじゃねえか!

 一方新伍は、マッティオの憤りがちっとも理解できない様子でひょいっと肩をすくめると、

「しょうがないなあ。じゃあおれが真ん中でマッティオとサリナスが左右両脇でいい?」
「いいわきゃねえだろ! つーか根本的解決になってねえ! ゲイのツーショットが仲良しホモだちトリオになるだけだろ !?」

 マッティオの抗議など聞こえていないかのように、新伍は満足げにうなずいた。

「よしこれでキマリだね! サリナス〜! ちょっとこっち降りてきてよ!」
「ヒトの話を聞けやゴラァ !? ってお前どこ見てんだ?」

 新伍の視線の先を辿って、マッティオは訝しげに眉をひそめた。
 館の二階、例のバルコニーにもたれてぼんやりしているサリナスをしげしげと見やる。

「なんだあいつ? いつのまにあんなトコ上がったんだ?」

 一見ロミオとハムレットを足して二で割ったような王子様めいた容姿の男(ただし黙ってさえいればの話)が物憂げに佇む姿は、蔦の絡まるバルコニーを背景に思いきりワル目立ちしていた。

 すぐ下で女性観光客が押し合いへし合いデジカメを構えてキャーキャー騒いでいるのに、当のサリナスはてんで気づかぬ様子でひたすらボケっと遠くを見ている。

 と思いきや、サリナスはゆったりと視線を中庭に向けた。

「――アオイ。なにか用か?」
「うん! 写真撮るから早く降りてきてよー!」
「わかった。いま行く」

 淡々とした顔でうなずいた。バルコニーの手すりからゆったり身を起こす。
 こいつ、新伍の言うことはやけに素直に聞くよな。

 まあサリナスに限らず大概のキーパー連中は新伍に甘い。むろんジノは言うまでもない。(あれは甘いなんてものじゃない。人間としてヤバいレベルだ)。
 もしかしてキーパーに好かれる体質というやつなんだろうか。敵味方おかまいなしに所構わず懐きまくる新伍も新伍だが。

 マッティオがぼんやり考えこんでいると、ふいにサリナスの動きが止まった。
 まるで彫像と化したかのように微動だにせず、遥か彼方のとある一点を食い入るように凝視している。はて、いったいなにを見ているのだ?

 次の瞬間マッティオは大きく目を見開いた。

 サリナスはひらりとバルコニーの手すりに飛び乗ると、中庭を見下ろした。涼しい顔でなにやら目測している様子。

 マッティオは嫌な胸騒ぎを感じた。この手の胸騒ぎはなぜか大抵当たるのだ。とはいえかけるべき妥当な言葉が思いつかず、酸欠の金魚みたいに口をぱくぱくさせていると、

「……って、ちょ、おま !? 早まるな――!!」

 マッティオの絶叫をBGMがわりに、サリナスは平然と宙に身を躍らせた。

 ここはイタリアの花の都ヴェローナ。南太平洋のペンテコスト島じゃないんだぞ。

 悲鳴にも似た叫びがあちこちで上がる。不幸にもヒモ無しバンジージャンプを目撃してしまった観光客は、開いた口がふさがらない様子で呆然と立ちつくしている。

 二階とはいえ地面までの距離は相当なもの。よくて足首捻挫、打ち所が悪ければ最悪の事態だって十分あり得る。

 が、大方の予想をあっさり裏切ってサリナスは軽やかに着地した。
 それもやたらカッコよくビシッとポーズまで決めて颯爽と立ち上がる。

 マッティオは呆れ半分、感心半分といった微妙な眼差しでサリナスを見た。

 新伍が「早く」と急かしたのは事実だ。だけど二階からダイレクトに飛び降りることはないだろう? 階段使えよ階段!
 それともブラジルでは直接窓から飛び降りるのがデフォルトなのか?

 サリナスはマッティオの冷ややかな視線などまったく頓着せず、

「悪い。ちょっとサイン貰ってくる」

 言い終えるや踵を返して駆け出した。
 サッカーのGKというより、世界陸上100メートル決勝ランナーを思わせる猛烈な走りっぷりだ。あっという間に後ろ姿が豆粒ほどに小さくなる。

 マッティオは呆気にとられて見送りながら、

「はァ? サイン? なんなんだあいつ」
「ん〜、……なんか向こうにいるよ。ほらあそこ。ひとつ前の日本代表監督だよね?」

 サリナスの走り去った方角を遠目に見やってボバングが言った。

「なんだって? マジかよそれ」

 先代の日本代表監督といえば言わずとしれたコインブラ。なんでもブラジル人にとって神にも等しい存在だと聞く。そう考えるとサリナスの異常行動も説明できないこともない。

 しかしなんでまたそのカミサマがヴェローナの路地裏なんか歩いてるんだ?

 内心疑問に思いつつマッティオはボバングの示す先を見た。
 いくら目を凝らしてもそれらしき人物など影も形も見あたらない。

「はァ、どこに? なんも見えねーぞ」
「えーとね、ここからだいたい2キロくらい先かな」
「に、2キロ先だぁ !? ンなもん見えるわけねーだろがっ !!」
「え、そうなの? ボクの国じゃジョーシキだよこんなの」

 ボバングがきょとんとして言い返す。
 そんなこと証明するまでもなく明らかなことだと言わんばかりの態度で。
 あたかも奇妙な珍獣でも観察するかのようにマッティオの顔をじっと見つめると、

「そっかー、マッティオには見えないのかー。変わってるねーイタリア人って!」

 あからさまに驚き顔でボバングが言った。

 ちょっと待て。これってイタリア人が変なのか?
 暗黒大陸と南米大陸の住人が変なだけだろ、明らかに。

 だがマッティオは口から出かかったツッコミをかろうじて飲み込んだ。
 ボバングのトンデモ視力説に納得した訳ではない。
 これ以上なにを言ってもムダだと悟っただけだ。

 憂いと諦観の念がじわじわと押し寄せてくる。

 もういい。たとえブラジル人が二階の窓から飛び降りようが、ナイジェリア人の視力6.0がデフォルトだろうが、ついでにデンマーク人がギロッポンだろうが構いやしない。各自好きにすりゃいいさ。

 左腕にあいかわらず新伍をぶら下げたまま(ヤシの木にしがみつくコザルの如くひっついて離れないのだ)、マッティオは投げやりな気分で力なく笑った。

 と、その時、頭の片隅でカシャっというかすかな音を聞いた気がした。
 デジカメ特有のあの機械音である。
 なんだシャッター音か。

 ……シャッター音?

 マッティオは驚いて目を見開いた。

「撮れたよーシンゴ。じゃ、そっち送るね」
「うん、お願い。……あ、きたきた。ふうん、写真撮るの上手いねボバング」

 手にした携帯電話のディスプレイをしげしげと見つめて新伍が言った。
 ふいになにか思いついたように瞳を輝かせる。いそいそとメーラーを立ち上げてせっせと早打ちし始めた。

 そんな新伍の姿に、マッティオはものすごく嫌な予感を覚えた。
 ちょっと待て、と声を掛ける暇もなく、

「よっしゃ送信完了」

 新伍は軽くうなずいて携帯を二つに折りたたみ、ポケットに放り込んだ。

 マッティオはなかば呆然とした面もちで新伍を見下ろした。

「そ、送信ってお前まさかさっきの写真―― !?」
「うん。ジノんとこ送ったけどそれがなに? ……どしたのマッティオ。顔色悪いよ」

 思わずその場にしゃがみ込んでしまったマッティオの顔をのぞき込んで、新伍が不思議そうに首を傾げる。

 ジノに送っただと?
 地獄の火薬庫に火炎瓶投げるようなコトしやがって―― !?

 新伍の顔には悪意など欠片も見あたらない。
 自分がしでかしたコトの重大さにまったく気づいていないのだ。
 かくも空気が読めない( or 端から読む気がない)イキモノ。その名は葵新伍。

 それはともかくとして、だ。

 マッティオは気を取り直してすっくと立ち上がった。
 こうしている間にも刻一刻と破滅の足音が近づいているのだ。
 ミラノ ― ヴェローナ間は約150キロ。車で飛ばせば3時間弱。逃げるなら今しかない。

 決意と共にこぶしを固めてマッティオは踵を返した。

「じゃあまたな、シンゴ。オレは逃げる」
「へえ、なんだか知らないけど面白そう。おれも行く〜!」
「だーッ、お前は来んな――! ジノまでついてくるだろーが !?」

 マッティオはカペッロ通りを全力疾走しながら、すぐ後ろをついて走る新伍を怒鳴りつけた。





 その頃ジノ・ヘルナンデスは携帯メールの添付画像を冷ややかな眼差しで見据えていた。

「ふふふ……いい度胸だ。覚悟はいいな、マッティオ?」

 ゾッとするような笑みを浮かべると、手にした携帯をグシャっと握りつぶした。




>あとがき
Road to 2002 時代 or ちょっと後。
WY以降行方不明のサリナスが不憫すぎるのでアルバに入れてみました。
入ったら入ったでやっぱり不幸だった。

まあぶち切れたジノから逃げ切る確率がジャッポーネの銀行利息より低そうなマッティオよりましかもしれません。
続き(というかジノ側の話。ツンデレ紳士込み)も書きたいです、ハイ。

ちなみに作中のコインブラ氏はテクモゲーの彼ではなくジ○コの方です。

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