2004/06/03


想いを告げて




あれから3年……
           俺にとっては長く
 
           私にとっては一瞬で

自分の想いを
  
           言いたくても言えない言葉

           知らない振りをして気付かない様にしていた言葉

嘘ついている

           自分に……そして彼女に……
 
           私は逃げてるの……

でも

           彼女に会う時が来れば……

           彼に会う時が来たら……

言ってみよう
 
           偽りのない言葉を…

           ただ「好き」と…

でも…

           俺と彼女は出会うのは…
      
           私と彼が出会うのは…




            無理なのだろうか?

            もうないのかな?








ここ同盟軍、ローラント城。
軍主ご一行様はまた今日もお出かけでの予定。この前、ルカ・ブライトを倒したばかりなのに今度はどこに行くのか…、
でもそんな事は今のビッキーに関係なくて、いつものようにのほほんとしていた。
「ビッキー、今日もテレポート頼める?」
「お安い御用だよ♪」
軍主であるデュークがビッキーに言うとビッキーはにこっと笑って頷く。
「今日は大丈夫だろうな?」
すっごく心配しているフリックがそう言うと、ビッキーはきょとんとしてまた笑顔になって
「今日はいい感じだよ?失敗しない気分かも」
その「かも」の部分にちょっと不安を覚える一行だが、デュークとナナミだけは
どこに飛ばされ様が楽しみそうだ。
「失敗したら僕の手をわずらわすだろ?」
ルックがため息まじりでそう言うとフリックとビクトールは
「その時はよろしく」
と同時に言うとため息をついた。
今日のメンバーはデューク・ナナミ・フリック・ビクトール・ルックらしい
「どこまで飛ばせば良いの?」
ビッキーは首をかしげてそう言うとデュークは
「バナーまでお願い」
と言う。グレッグミンスターにでも用事があるのかな?と密かに思ったが、気にしないビッキーは笑顔で頷いて
「うん、わかった。行ってらっしゃい、えい!」
瞬時に軍主ご一行様は姿を消した。ビッキーはふぅとため息をついてその場にしゃがみ、ここに居ない誰かの事を思う。
(ディールさん……今、どこにいるの?…会いたい)
ビッキーは顔を埋めてそのままでいると遠くからパタパタと足音が聞こえて顔を上げると
メグとテンガアールとミリー、そして二ナが居た。
「ねぇ、ビッキーちゃんも一緒にお昼、一緒に食べない?」
メグがそう言うとビッキーはにこっと笑って立ち上がる。










レストランに向かう途中、メグがふと
「そう言えば、ディールさん」
ディールの名前を聞いてピクリッと体が強張る。ディールの事を知らない二ナとミリーが
「誰?」
と聞くとテンガアールが口を開く
「ディール・マクドールさん、三年前の解放軍のリーダーさんだよ」
「今じゃ英雄だけど…行方くらましちゃって…」
ビッキーは話に加わらず、ただ聞くだけにした。
「ディールさんってね頭良いし、強いし、かっこいいんだよ〜…確か…今年で二十歳かな」
メグがそう言うとビッキーは立ち止まった。
「え?ディールさんって…17歳じゃ…」
「あれから3年経ってるんだよ?…そっかビッキーちゃんは…」
ビッキーは俯き、皆が3年の月日を歩んでるのに自分は三年前のパーティーでテレポートしてしまい
三年後にきてしまった。皆も少し変わってるのに自分は変わらない
それが無性に寂しくなった。でもあれからのディールと会ってる人はいない
そしてビッキーも……
「冷静沈着…彼にぴったりの言葉ね」
「ヒックスもディールさんを見習って欲しいな」
メグとテンガアールがディールを知らない二人にそう言うと
二人は少し興味があるのかどんどん話が盛り上がっていく

(お願い…彼の話をしないでよ…)

「フリックさんとどっちがかっこいい?」
「フリックさんとディールさんは結構、前の戦争でも女性からもててたよ」
「どっちもどっちだと僕は思うけど……」
チクリッと胸が痛み首をかしげる
(あれ?私、さっき何て……それになんでここが痛いんだろ?)
ビッキーは胸に触れてまた首をかしげる。

「彼を好きだ〜って言う女性が多かったよね」
「特にカスミちゃんがね…」
くすくすと笑う二人
「会ってみたいな〜〜」
「ね〜」
四人の話を聞いてズキリッと胸が痛む。

彼の話をしないで…

好きにならないで…

「ビッキーちゃん?」
「え?」
ビッキーは顔を上げて、四人はビッキーを見つめる。
メグがため息をついて
「ビッキーちゃんってディールさんの話をしてる時、いつも以上にぼーっとしてるよ?」
「そうかな〜?」
ビッキーは首をかしげてそう言うとメグとテンガアールはため息をついてやれやれと首を左右に振る。
ミリーと二ナはなんの事だかさっぱりだった。











メグ達と食事を済まして城の中をブラブラ歩いて他愛無い話をする。
ビッキーはふと足を止めて後ろに振り返る。
(…ディールさん?)
ここにいない人の声が聞こえビッキーはただ誰もいない場所を見つめる。
立ち止まっているビッキーに気付いた四人は首をかしげてビッキーの側に近づいて
「どうしたの?」
「…ごめん…私、ちょっと行ってくる」
ビッキーは言うや否、急に走り出した。テンガアールがビッキーを呼ぶが
今のビッキーには聞こえなかった。無我夢中で走り出し自分がいつもいる場所まで走った。
「どうしたんだろ?」
メグが心配して四人は顔を見合わせて
「追いかけよう、なんか心配だよ」
二ナがそう言うと皆は頷いてビッキーを追いかけた。





息を切らしてビッキーは自分が元いた場所に辿り着くが、そこはとても静かで
石版の側にいるルックも居なくて、デュークとナナミ達がまだ帰ってきていない
自然と涙が流れ落ちる。
(会いたい…ディールさんに……胸が苦しい…)
その時、鏡が光ってデューク達が帰ってきた。デュークとナナミはビッキーに微笑み
「ただいま」
と言うとビッキーは涙をふいて
「おかえ…!?」
「…久し振りだね、ビッキー…」
言いかけた言葉がつまり、懐かしい人をただ見つめた。
懐かしい人…とても会いたかった顔
とても聞きたかった声、三年前行方をくらました人……
解放軍リーダー、ディール・マクドールがそこに居た。
また流れる涙。その場に居た人は驚いてビッキーをみつめる。
ナナミがビッキーに触れようとすると急に走り出した。
「ビッキーちゃん…どうしたんだろ?」
ナナミがそう言うと答える者はいない
「ビッキーを追いかけ……え?」
デュークが追いかけようとした時、先に追いかけた者がいた。ディールだった。
「ごめん、俺が行く」
そう言ってビッキーを追いかけた。その場に居た人はただ呆然とそこから動かない
「……想いを伝えないなんて馬鹿だよね」
「は?」
ルックの言ったのがわからなかったのかビクトールが問い返すが
「…いつかわかるだろ」
ルックはそう言ってデューク達から離れた。少し昔の事を思い出して……
ビッキーは自分の気持ちに気付いていないがディールに恋して
ディールは自分の気持ちに気付いているがその想いをビッキーに伝えない
ルックはため息をつく、ディールの性格を知っている為、心配はするが何も言わない
これだけはあの二人の問題なのだ。



「ビッキー!!」
「おっ…追いかけないで下さい」
走りながらそう言うビッキーは涙を拭うと前を見てなかった為、誰かとぶつかった。
「ビッキーちゃん!!もぅ、どこに行ったのかと……ディールさん!?」
ぶつかった相手はメグ、後からテンガアール達が追いつき、ディールを見つめた。
「ディールさん!?」
「え?彼が?…へぇ〜確かにかっこいいかも…」
「でもめつきわるい…」
テンガアールと二ナはミリーの頭をポカッと叩く。ビッキーはメグの後ろに隠れて
ビッキーが泣いてる事に気付くメグとテンガアールはキッとディールを睨みつけて
ビッキーを隠すように両手を広げて
「たとえディールさんでも…」
「…二人とも、そこを退いてくれ」
二人は睨み続けたままそこを退かない。ビッキーは流れ落ちる涙をただ流しつづける。
ディールはため息をついて前髪をかきあげて一呼吸すると
「ビッキー…そのままでいいから聞いてくれ」
ビクッと体が震えて耳を塞ごうとすると



「君が好きだ」


その場に居た四人とビッキーは自分の耳を疑った。そして驚いた。
真剣な顔でディールは続ける。
「君を愛してる。たとえ君が俺を嫌いでもこの気持ちは嘘じゃない」
ディールはメグとテンガアールに近づいて
「もう一度言う…そこを退いてくれ」
無理やりでも通れるだろうと二人は思ったが、そんな事をするなら信用しなかっただろう
ただ二人は顔を見合わせて
「ビッキーちゃんを泣かさないなら…」
テンガアールがそう言うとディールはフッと笑って
「約束しよう」
と言うとメグとテンガアールは二人から離れた。その場は少し静寂になると
ディールは数歩、ビッキーのいる場所に近づく、そして微笑み
ディールの表情を見た四人は顔赤らめドキッとする。
「ビッキーの事が好きで愛しい……他の奴に渡したくないと思ってる。」
「……」
「本当はビッキーに嫌われるんじゃないかと不安でこの想いを殺し続けていた。でも……」
ディールはビッキーに近づいて後ろから優しく抱きしめた。
「もう限界だ。ビッキーさえ良かった……ビッキー?」
ビッキーはディールから離れて後ろに振り返り泣き顔のままディールに抱きついた。
「私もっ…ひっく……ディールさんが好き……」
「それは友達の好きじゃないよね?」
ディールは抱き返してビッキーの頭を撫でる。ビッキーはただ頷くだけだったが
今のディールにはそれでよかった。
服を掴んで泣きじゃくるビッキーは深呼吸して
「会いたいって思ってた。声を聞きたいって思ってた」
「…何でさっき泣いたか聞いていいかい?」
ディールは優しく言うとビッキーは頷いてまた深呼吸をする。
「ディールさんが目の前に居て…嬉しくて…でも私の気持ちを知ったら迷惑かか……!?」
「!?」
ビッキーは言いかけた言葉を終らないうちに口を塞がれた。
その場にいた四人は顔を真っ赤にして顔を抑える。
「それで…俺が君の前からいなくなると思ったからか?」
ディールは真剣な顔で言うとビッキーは服を掴んだ手が強張るとディールはため息をついて
「俺は…君にとっての空でいたい…いつでも君を探せるように……」
そしてビッキーの髪をいじってキスを落とす。
「迷惑じゃないし君の前からもいなくならない……」
ビッキーはディールから離れて涙を流しながらにこっと笑う。そしてディールの首に腕を回して
「哀しみまでも包み込んであげる。ディールさんはひとりじゃないよ」
とビッキーが言うとディールは驚いた顔をする。そして微笑み
「ビッキーには敵わないな…」
そう言うとくすくすと笑う。四人は静かに二人から離れる。それに気付いたディールは
ボソリッと「ありがと」と答える。
ビッキーが泣き止むまでディールはただ優しく抱きしめて微笑む。大切な人を守るように…










「まさかディールさんがビッキーちゃんを好きだなんてね〜…」
メグがそう言うと二ナはくすくすと笑って
「でもあんな風に言ってくれると嬉しくない?」
「いがいとやさしいひとだったね〜」
ミリーがにこにこしてそう言うと三人は笑顔で頷く
「……でもお似合いだよ、あの二人」
テンガアールは後ろに振り返りにこっと笑う。










私の声が聞こえますか?
この広い世界は繋がってる
白い雲は流れ風になて
君のもとへ……


帰る場所であるように……









                                               END



石猫のタワゴト

恋する二人には周囲の人間など目に入らないものです。
ましてや照れるなんてつまらない概念は持ち合わせておりません。
以上バカップルの定義。

ビッキーをかばう四人の娘さんたちの友情がウルワシイです。
特にミリーの無邪気に本質をえぐるコメントがイカしてます。
友情っていいですね。ハムより薄いかもしれないけれど。



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