2001/10/12


Please Alive









生きてさえいればいつかまた、会える日が来る。

だからどうか生きていて











「リウさん天気がいいよ♪ね、どこか行こうよ」

彼女の無邪気なお願いを、僕が断るはずが無く

「いいね。」

とすぐさま応えた。



でも、まさかあんなことになるなんてね?



「どどどどどどどど…どうしようリウさん???えええ…やだ。やだあ!!」

混乱するビッキーの肩を「大丈夫」、としっかり握り締める。


―囲まれた―



出かけようとして、ビッキーが使ったテレポートは見事に失敗して

さらに不幸な事に、魔物の巣に飛ばされてしまったのだ。

ぐるるるる・・・。誰が聞いても明らかな、腹を空かせた獣の声。


鋭い目も


涎を垂らしたさまも


奴等の飢えを伝えていた。



少しのスキも命取り。



テレポートも…これだけ数がいたら無理だろう。


最悪な事にすり抜けの札も無かった。



ならば戦うしかない。


「ビッキー。僕から離れないで…。すぐすませるから」


こくんとわずかにビッキーが頷いた。



そして戦闘がはじまる。







            ++++++++++++++++++







ガアアアアッ!



同時に複数の魔物が襲い掛かる。



大丈夫、この程度ならすぐカタがつく。


「ソウルイーター!!」


紋章が闇を放ち、襲い掛かってきたものたちはみな飲み込まれる。


近くにはもういない。はやく…ビッキーは?





後になって思えば冷静さを欠いていた自分。

だって彼女を放っとけなかった。

心配だったから



「ビッキー!!大丈夫?」


「リウさんっ!!」


傷一つないようで、ほっとする。

足元にころがるバケツ。

ビッキーも頑張ってたんだ・・・

僕の手の届かない分まで。


そっと彼女を抱きしめる。


「頑張ったんだね・・・」


とたんに泣き出す少女。「・・・怖かったのっ!」

僕はそっとその背を撫ぜる。


無事で良かった。


絶対に失いたくないひと。


たった一人だけの。


唯一僕の恋する人




その瞬間悪夢が襲いかかった。




無事で良かったと

たった今思っていたのに


ビッキーを撫ぜるぼくの手袋を熱く、なにかぬるりとしたものが伝う。

それはビッキーの血。



不審に思って顔を上げると

彼女の背中に、深々と食らいつく魔物がいた。


まだ敵が潜んでいたのだ―。



「うわあああああ!」




がむしゃらに棍を振る。


「ビッキーから離れろ!」


普段の冷静さも何もかも殴り捨て、僕はただ戦いに没頭した。


彼女が失われる?

そんな事許されないのだから!



「ビッキー!」

魔物を始末してすぐさまビッキーに駈けよる。

けれど戦いなれない彼女が後ろから、手加減なしにうけたダメージはそうとうなもので。


「ビッ・・・キー」

少女の脈は弱々しく、息遣いは儚かった。


「返事を…してくれ」


しかし応える声はない。

心臓の鼓動も

息吹も


なかった。

こんなことがあってなるものか。


水の紋章も。おくすりの一つも無くて



僕はこうしてなにもできないのか?

彼女はこのまま失われてしまうのか?


永遠に



'方法はあるよ'


・・・テッド?

'ソウルイータをつかうんだ'


それは今の僕がたったひとつ、持っているものだった。




僕の望みをかんじとり

紋章がビッキーを闇に取りこもうとする。


そして

その状態でストップする。

彼女を、ビッキーを取り戻すのに。


「彼女を還して」



還して。


ここに。



それは願い。


何よりも強い想い。



―聞こえる?ビッキー…。







            +++++++++++++++++++







なんだろう。

暗い暗い、場所で


私は懐かしい声を聞いた。



その声はひどく悲しそうに


私の名前を呼んでいた



『ビッキー』

その声を聞いていると、どきどきする


切なそうだから?

だから胸が締め付けられるの?


ちがう

そんな気持ちじゃない・・・。


そうじゃなくて。







わたしが


もう一度


この人と


会いたいの・・・




名前はそう・・・たしか






「リウさぁ・・ん・・!」



カアアアアアア!



とたんに闇が眩しい輝きを放ち出す。


やがてあらわれたのは・・・ビッキー。


待っていた。

信じてた。

また会える事。


「お帰り・・・」


「ただいま・・・リウさん」


2人とも泣き顔だった。

でも浮んでいたのはたしかな喜び。







        +++++++++++++++++++++++







「ねえ、でもどうして私戻ってこれたの?死んじゃっていたのに・・・」

ふと不思議そうにビッキーが言った。

「ああ。それは・・・」

ぽつぽつとテッドが教えてくれたことを説明する。

この紋章の力を。


ソウルイーターにはいくつかの力がある。

それは紋章の主と、死者の心によって異なった力を発揮するのだ。

主が死者に対して何の感情も持ってなかった時は'滅び'を

ただし死者が復活を望むなら'転生'をもたらす。

また、主が死者に対して生きてて欲しいと願った時、

それでいて死者の方は「もう死んでもいい。」と思っていたときは'魂食らい'

つまり、オデッサや…テッドたちのように紋章のなかに魂を取りこむのだ。


ただし


主と死者が、ともに強く強く「生きて欲しい」「生きていたい」と、願った時には

'復活'が訪れる・・・。


「要は、ビッキーが生きたいと思ってくれて、僕も生きてて欲しいとおもったから。その願いをこいつ
が叶えてくれたんだ。

「そうなんだ・・・」

そうして浮ぶ笑顔。

それは彼女が確かに生きている証拠。

・・・でももう少し・・・君の温もりを確かめさせて欲しいんだ。


「ビッキー。目…とじてくれる?」

「うん?」


不思議そうにではあったが、素直に目を閉じる少女。


それを確かめて僕は



そっと包み込んで


唇を重ねた。



・・・あたたかい・・・


伝わる温もり

生きてる感覚

たしかにここに存在するという、手触り。


きみはたしかに

生きてるんだ・・・



不意に溢れる涙。



「え???リウさんどうしたの?」

キスよりも涙に動揺するビッキー。

すごく彼女らしくて安心する。

「そっかあ!おなかすいたもんね♪・・・早く帰ろう!」


おもいがけぬその言葉がおかしくて

「あははははは!」

と声をあげて笑ったら

次の瞬間オナカがなって

今度はビッキーに笑われた。



生きてさえいればまた会えるから

だからどうか、死なないで

君はぼくの希望だから

未来を照らす光だから




・・・ねえ、ビッキー。













                                       END



長かった・・・。
僕らはみんな生きている〜♪ちっくな作品。(違)
坊びきにゃあ珍しく、ちらりとシリアス。
それにしても私ってアクション苦手だったんだ・・・。
うふふふふ・・・。いいもんラブさえあれば・・・。
ソウルイーターの説明は、全部ホラ話〜。たれてるこ論!(わかってるってば)
そうそう。ついに書いちまいましたよ…キスシーンってものを。
うぎゃう・・・恥ずかし〜!
だから逃げよっと。
石猫さん〜。こんなのでも坊ビキ研で引き取ってもらえるのでしょうか?




■石猫のタワゴト■

はい、速攻盗ってまいりましたです。
シリアスでアクションでラヴラヴなお話ありがとうございますv
ソウルイーター設定ナイスじゃないですかー!
幻水はイロイロ自分設定を作れるから楽しいんですよねぇv
どんな状況においてもあいかわらずぼけぼっけなビッキーがおかしくも可愛いですな。
だからこそ闇を照らす彼の光であるんでしょうけど。



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