2001/09/07

飛べない理由








「ごめんねシェインさん。バナーまでしか送れなくって…」
「ううん、仕方ないよ。…距離が遠いからだよね?」
「え、え、え、…うん。」


「(ふうん?…まあいいや。無理強いして変な所に飛んだら大変だし)じゃあバナーまでお願い」

「いいよ♪よいしょっと…それっ!(やったあ、成功!)」



そして少年の姿は消えた。















本当はね。…本当の理由は距離じゃなくて…集中力。





グレックミンスター。



その名前をきくだけで「どきり」としてしまう。
だって、だってね…。リウさんの街なんだもん。
いろいろ考えちゃう。



今、どこにいるのかな?
今、なにをしているのかな?



…どうして…旅に出ちゃったのかなあ…?

リウさん。リウさんに会いたいよ…。




こんな気持ちだったらテレポートなんてできないよ。
「それっ」…そのたった一言でさえ重たくて。
だからテレポートできないの。ごめんね…シェインさん。















シュン!瞬きの大鏡(なんじゃそりゃ)が光り、城主があらわれた。



「あ、シェインさんおかえりなさ…」



…あ!????…



「ただいまビッキー♪…あれ、そっか。君も昔解放軍にいたんだっけ。…マクドールさんだよ」



ほほほほ、本当に…!?



「ひさしぶり」
「え???え???あ、こ、こんにちは!!!???」



え?どうしてこんなところに?えええ?え〜?
はにゃ…なんだか…頭がこんらんしてるよう。


くすくすくす。…そんなに時間は経っていないのに、懐かしく感じる声。


あ、笑っている…!?



「リウさん!よかったね。笑えるようになったんだね!」
「え?」
「だって…解放軍にいた時、あまり笑うなんてことなかったよね?」


「…そう…だった?」









+++++++++++++



「だって…解放軍にいた時、あまり笑うなんてことなかったよね?」


「…そう…だった?」




彼女の言う事が真実だとすれば。
僕はずいぶんと余裕が無かったのだろう。
…だってあの時だって。…彼女―ビッキーの前でだけは安らいでいたはずだから。





「まいったね」



この少女にはどうやら敵わないようだった。
それにしても…なんか引っかかるような…?
僕の疑惑はその後、明らかになる。















「僕もつくづくいい人だよね…」



2人の世界に入っているビッキーとリウを残して、こっそりとその場を離れたシェイン。
実はかれは、ビクトールやフリックから「ビッキーとマクドールが相思相愛だった」ことを漏れ聞いていたのだ。


その上で‘グレックミンスター’に関するビッキーの奇妙な反応。これはきっと、マクドールが原因か!?という推理を働かせ、かの英雄を連れてきてやろう!ということになったのだ。(そうしたらミンスターまでテレポートできる!という打算もあったのだが)





「嬉しそうだったよね…」



ビッキーの表情が目に浮ぶ。


(でもね。今日は譲ってあげるけれど…諦める訳じゃないんだよねえ。僕は、けっこう諦めが悪い方だし?)


少年の瞳が不敵に煌く。



(なあ〜んか感じ似てたよねえ、僕とあの人って。こういう相手って燃えるなあ♪)








彼女が大切なのは自分も同じ。側にいてこころ休まるのは譲れない想い。







(今は僕の方が不利ではあるけれど。そんなことは関係が無い!)




シェインは闘志を燃やしていた。





…デュナン解放軍のリーダーは、実はこういう奴だったのだ…。















+++++後日談++++++++



「ビッキー。グレックミンスターまでテレポートお願いできる?」
「え?」
「だってもう大丈夫だよね?…マクドール(さん)がいるんだし」


「…ちょっと。いつから君は、僕の事を‘マクドール’だなんて(軽々しく)呼ぶようになったんだい?」




静かな戦いが始まろうとしていた。



「え?僕、そんなこといってませんよ。きちんとマクドール(さん)って…」

「………………」




確かに。シェインは「さん」づけで呼んでいた。(ただしごくごく小さな声で。)



「で、どうして飛べないの?ビッキー。この人はここにいるのに。」
「え???だって…リウさん帰っちゃいそうで…」



今度はそういう理由で飛べないというわけだ。



「………」



にこにこと(とても嬉しそうに)眺めるリウ。
一気に不機嫌になる、城主。しかし長年の猫はなんとかつけたままで



「…・じ、じゃあもしミンスターにかれが居た場合は?」と言った。(モチロン笑顔:ただし少し引きつり気味)

「それはそれで『リウさんに会える!』って思ったら集中できないし」



トランの英雄はますます笑顔になって、ビッキーに抱き着いた!



「!!!!!!」



シェインの怒りはますますヒート・アップ!



それにさらに追い討ちをかけるがごとく「安心してビッキー。僕は
ずっとここにいるから。…彼もそう望んでくれてるし…ねえ、シェイン?」



(こ・の・お・と・こ・は・ああああああ!)


ついに我慢し切れず、さりとて「ビッキーの前で」怒る訳にもいかず…
くるりと身を翻す。それが精一杯だった。



「あれれれ?シェインさんどうかしたの?」



不穏な空気に全く気づいてない少女が、無邪気に呟く。すると、もう1人の猫かぶり少年が‘しれっ’と答えた。



「そういうお年頃なんだよ」

と。









■石猫のヒトコト■

今回のツボはしぶとくメゲない2主君です!
そう・・・こーいう彼に滅法弱いワタシ。
頑張れ、少年!明日があるさ!
一枚上手な坊ちゃんもス・テ・キ v

バナーまでしか飛べない理由。
ヲトメ心だったのか・・・カワイイぞ、ビッキーvvv



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