好きです。…いつからかそう思っていた。
りりしい顔。強い眼差し。…それでいて、あふれんばかりの優しさをもったあの方。
マクドールさま。
「あれ、また呪文をわすれちゃった。」
「…ビッキー。君は本当に…。」
「え、え、え、もしかして怒ってますか?あわわわ…」
ふわりと微笑む少年。
「はは。…大丈夫、怒ってなんかいないよ。」
「…よかったあ。」
ほっとして息をつく少女。
「私、ぼけてばかりいるから…あきれられちゃったかなあって、思いました。」
ぽんぽん。と少女の髪を撫ぜる。
「いいんだよ。ビッキーはそのまんまで。…可愛いいんだからさ。」
「えええ?わたしが?」
「うん。」
相変わらず少年は、ニコニコとした笑顔でいる。
「わわわ…なんだかうれしいですよお…」
少女の頬は、やがて桜のようなピンク色に染まっていった。
そんな2人をそっとみつめる者…カスミ。
あの方があんな微笑みをみせるなんて。
あんなに柔らかく笑うなんて。
あんな表情グレミオさんの前でもしないのに…。
こんなの悔しい。
切ない。
嫌。
だけども…敵わないということがわかる。わかってしまったのだ。
あの2人はとても幸福そうにしている。
彼と彼女と…
お互いに想いあっているということが、ひしひしと伝わってきた。
私じゃ駄目、なんですね…。
絶望。暗い感情が、水のように染み渡る。
だってあの方が本当に笑うのは、あのひとのまえだけだもの。
誰にでも優しいけれど、特別なのはあのひとだけだもの…。
「…マクドール…さま。…リウさま…。」
ぽつりと名前をつぶやいた。
とたんにあふれる、涙。愛しさ。
だけど、だけど、もういいのよ…っ
あなたが幸せならば、この気持ちが叶わなくても。
どんなにつらくたって、悲しくたって。
カレハシアワセナンダカラ。
「ああ、カスミ。ちょうどいい所にいた。」
「…あっ…!マクドールさま!!こんにちは!私に何か?」
「うん。ちょっと偵察に行ってきて欲しいんだけれども…いいかな?」
「はい!」
嬉しい。私を頼って下さるのですね。…忍でよかった!
心が躍る。彼には愛する人がいる…その事は分かっているけれど、どうしようもなかった。
想いは止められない。この心は、止まらない。
「マクドールさま。」
「うん?」
「これからも…私にできることがあったら、いくらでも言って下さい…ね?」
彼はいつもの微笑みで
「ああ。もちろんだよ。」と言った。
「…嬉しいです。ありがとうございます。」
かれが私のことを少しでも頼ってくれる。それが無性に嬉しかった。
「では偵察にいってまいります」
「気をつけて…」
「…!はい!」
気をつけて。
ささやかな当たり前の言葉。でも私だけにくれたもの。
…彼が、好き。
見ているだけで構わないから、この想いを捨てる事はできない。
初めての恋だから。
あのかたが本当に好きだから…。
桜が散った後残る葉のように
これからもあなたを、想いつづけていいですか…?
たとえ花が咲かなくたって、この恋心は枯らせないから。
心のなかであなたを愛して
あなたの幸いを願っています。
愛しいリウ・マクドール様が幸せでありますように。
どうか…叶うものならば。
ずっと、永遠に。
END |