2001/08/15


葉桜






好きです。…いつからかそう思っていた。
りりしい顔。強い眼差し。…それでいて、あふれんばかりの優しさをもったあの方。

マクドールさま。





「あれ、また呪文をわすれちゃった。」
「…ビッキー。君は本当に…。」
「え、え、え、もしかして怒ってますか?あわわわ…」


ふわりと微笑む少年。


「はは。…大丈夫、怒ってなんかいないよ。」
「…よかったあ。」


ほっとして息をつく少女。


「私、ぼけてばかりいるから…あきれられちゃったかなあって、思いました。」


ぽんぽん。と少女の髪を撫ぜる。


「いいんだよ。ビッキーはそのまんまで。…可愛いいんだからさ。」
「えええ?わたしが?」
「うん。」


相変わらず少年は、ニコニコとした笑顔でいる。


「わわわ…なんだかうれしいですよお…」


少女の頬は、やがて桜のようなピンク色に染まっていった。






そんな2人をそっとみつめる者…カスミ。






あの方があんな微笑みをみせるなんて。
あんなに柔らかく笑うなんて。
あんな表情グレミオさんの前でもしないのに…。
こんなの悔しい。
切ない。
嫌。



だけども…敵わないということがわかる。わかってしまったのだ。
あの2人はとても幸福そうにしている。
彼と彼女と…
お互いに想いあっているということが、ひしひしと伝わってきた。


私じゃ駄目、なんですね…。


絶望。暗い感情が、水のように染み渡る。

だってあの方が本当に笑うのは、あのひとのまえだけだもの。
誰にでも優しいけれど、特別なのはあのひとだけだもの…。



「…マクドール…さま。…リウさま…。」


ぽつりと名前をつぶやいた。

とたんにあふれる、涙。愛しさ。

だけど、だけど、もういいのよ…っ
あなたが幸せならば、この気持ちが叶わなくても。
どんなにつらくたって、悲しくたって。


カレハシアワセナンダカラ。


「ああ、カスミ。ちょうどいい所にいた。」
「…あっ…!マクドールさま!!こんにちは!私に何か?」
「うん。ちょっと偵察に行ってきて欲しいんだけれども…いいかな?」
「はい!」


嬉しい。私を頼って下さるのですね。…忍でよかった!
心が躍る。彼には愛する人がいる…その事は分かっているけれど、どうしようもなかった。
想いは止められない。この心は、止まらない。


「マクドールさま。」
「うん?」
「これからも…私にできることがあったら、いくらでも言って下さい…ね?」


彼はいつもの微笑みで


「ああ。もちろんだよ。」と言った。


「…嬉しいです。ありがとうございます。」


かれが私のことを少しでも頼ってくれる。それが無性に嬉しかった。


「では偵察にいってまいります」

「気をつけて…」

「…!はい!」


気をつけて。
ささやかな当たり前の言葉。でも私だけにくれたもの。

…彼が、好き。
見ているだけで構わないから、この想いを捨てる事はできない。
初めての恋だから。
あのかたが本当に好きだから…。



桜が散った後残る葉のように

これからもあなたを、想いつづけていいですか…?
たとえ花が咲かなくたって、この恋心は枯らせないから。
心のなかであなたを愛して
あなたの幸いを願っています。



愛しいリウ・マクドール様が幸せでありますように。
どうか…叶うものならば。
ずっと、永遠に。







                                       END



■石猫のヒトコト■

「桜が散ったあと残る葉のように
   これからもあなたを想い続けてもいいですか・・・・・・?」

カスミの心情がせつせつと伝わってきます。
辛くても愛する人が幸せならばそれでいい。
せつないです。でもステキ〜(なんじゃそりゃ?)

坊とビッキーもらしくてカワイイです 。
ほのぼのと幸せそうで v
幸せとせつなさが一杯な素晴らしい作品でうっとり。
ありがとうございました、たれてるこさん vvv


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