2003/02/14

そして、やがて春になる






静かに静かに雪が降る
大地は白銀に染め抜かれる
だけど側では君が微笑んでいて
春のように微笑んでいて
僕は、昔語りを思い出した。

「暖かな春の前に、寒い冬が来るのは何故か知っている?」

からかい半分のおどけた口調で、そっと君に問い掛けた。

「冬が来る理由~?」
つややかな黒髪を揺らし、小首をかしげる少女。
「えっと…そのほうが幸せだから?んん…なんか違うような…」
ささやかな問いかけに、懸命に答えを求める素直な君。

「僕の知ってる昔語りではね・・・

『…冬の王子さまが春のお姫さまに恋をしました。
お姫さまは恥ずかしがって、大地の奥深くで眠ってしまいました。
姫君が深く眠ったため、世界は冬に包まれます。
王子が嘆き、姫を恋しがる気持ちが一層寒さを呼びます。

王子は姫を諦められません。

恥ずかしがりやのお姫さまのために、純白のカーテンを敷いて。
そっと眠りに就いている姫君に、沢山のキスをそそぎました。
どうぞ目覚めて下さいとの願いを篭めて。

姫君は驚き、目を覚ましました。
頬の色は鮮やかな桜色…
胸一杯に恋心を芽生えさせ、冬の眠りから目覚めました。

…そして二人は恋人になりました。
時には熱い恋を
時には切ない恋をしながら

何度も眠りに就き
口付けで目を覚ますのです…』

…そう、伝えられてるよ」

冬の寒さは姫君が眠っている証
姫君を想う 王子の心
冬の雪は情事を覆うためのカーテン

「そうなんだあっ!」

そして、春の温かさは恋の喜び
一面に幸福が広がり、カーテンが開かれる。

こう考えると、満更冬も捨てたものじゃない。
…こんな話を思い出したのは、君の微笑みのお陰だろうか。

「雪は、恋を隠していたんだね。」

子供に聞かせるような昔語りに。
それでも瞳を輝かせて、真剣な言葉を聞かせてくれる君

「お姫さまがいないから寂しくて、恋しくて…だから冬は寒くて。
キスで目を覚ましたから。春はシアワセで、暖かいんだね。そっかぁ」
とても嬉しそうに。
それこそ春のような微笑みを見せてくれる。

なんだかこっちまでつられて・・・嬉しくなって。
話せて良かったなって思う。

忘れ掛けていた物語を思い出させてくれて有難う。
君の側ならいつだって春。

冬でも、秋でも、夏でも。
恋の花咲く春になる。











                                                 END


■ネコヤさんのコメント■

春は恋に浮かれてほかほか。夏は恋に燃えてあつあつ。
秋は恋に傷付き涼しく。冬は恋を請うて(or恋が眠って)寒し。

以上無茶苦茶にこじつけた話でした…。

坊ビキのイメージが冬と春。なのでそんなイメージの話を!作ろうとしたら。
なんだか謎な話になりました。
本当は季節のめぐるオハナシと、坊ビキな巡り合いを掛け合わせたかったんですが。
冬=キスなどの情事ってしちゃった以上、無理でした。
私の中では坊ビキの冬=二人の離れている間。
かつ、春=巡り合った二人。

なので離れている冬の間に、どうやってキスをすれと…ってことに。
結果坊ビキとあんまり関係の無い話ができました。
坊ビキ冬企画に投稿したのですが;駄目だこりゃ。力不足ー!

因みに、冬の王子さまと春のお姫さまなメルヘンはネコヤの創作ですので、本気にしないで下さい。



■石猫のヒトコト■

始まりは決まって「昔々あるところに」。
まさにビッキーは春そのものですねv
そばにいればいつだって小春日和。
みんなの心をほんわり暖かくしてくれます。
しかし坊ちゃんシアワセそーですな(笑)。

そういえば。とある北の国の昔話は「昔々まだニワトリに歯が生えていた頃」というフレーズで始まるそうですが(笑)。リアルだ……。


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