2002/03/31



消えない春



待ちに待った春が来た。




雪が溶け、緑が顔をだし、あちこちで喜びの声が聞こえてきそう


私はホウアン先生と一緒に薬草を摘んでいた。




「花もけっこう咲いてきましたね」



摘みながらふと、ホウアン先生がつぶやいた。




顔を上げるとたしかに、そこには。




「わぁ・・・ほんとうですね・・・」



咲き誇るとまでは言えないながらも。



つつましく、花が。



きらきらと日差しを浴びてゆれていた。






きっとあともう少し経ったら、鮮やかな色彩が一面に溢れる事だろう。




―あれぇ・・・?―





ふと、ひっかかるものを覚える。






何処かでこんな光景を見たような気がするのはなぜだろう?







季節はいつも巡り来るものだから、みた事が有るというのは当然なのだけど。

春以外の季節にもこんな感じがしたんだけどなあ・・・。










うーーーーーん・・・・・・・・・。


「ビッキーさん?どうかしましたか?」



心配そうなホウアン先生の声。


「へ?え、え、え、大丈夫です!!」

われに帰る。



「そうですか?それならいいのですが・・・」



こくこくとあわてて頷く。


「あの、考え事してたんです。本当に大丈夫ですよー。」


なるべく心配を掛けないように、にっこりと笑う。

「では、なにかあったときはいつでも医療所にきてくださいね」

「はい。あ、薬草これで足りますか?」

「ええ。充分です・・・ありがとうございます」


そうして先生と別れたけれど。




さっきの引っ掛かりはずっと消えなくて



いつしか日が暮れていた。


+++++


なんだったかなあ・・・。









一面の。

きらきらひかる。

心踊る景色。







ざわめく風が花を揺らし、それにあわせて花も舞う。











んっと、ううんっと・・・・えっとお・・・・







思い出そうと必死になって辺りをみわたす。


河。湖。


違うよ・・・きらきらするけれど、これじゃなくて・・・。




これじゃなくて・・・。











はた。






視界に光が飛び込んできた。




一面に広がり、揺らめき動く光達。



湖が写していた、それは


















夜空の星々。















「み・・・つけたああああ」








胸一杯に喜びが湧き起こる。



わ、わ、わ。そうだよ、星だよ!


うわわわわあ!よかったあ思い出したあ♪




どうしよう



なんだかすごくすごく嬉しい。










たいしたことじゃないけれど

ささやかなことだけど


気付けたことに少しわくわくする。










リウさん。









リウさんならなんて言うかな?



知りたい






あの人に、教えたい





聞いて欲しいの










リウさん!


















「ビッキー?」



声が、した。



迷わずそのひとを目指して










跳ぶ。





















シュン!!



















「リウさんっ♪」

「やあ。どうしたの?そんなに興奮して・・・珍しいね」

「うん!あのねあのね・・・聞いてほしいことがあるの」

「どうぞ?」














「夜空のお星様って一面の花野原みたいじゃない?」















瞬間。



ぱちぱちとリウさんは瞬きをした。




どどどどど・・・どうしよう?


わたし変な事いっちゃったかなあ?





あわわわわ失敗しちゃったよ・・・。

何も考えないで衝動的にいっちゃったけど・・・もっと考えてからにしたらよかった。





ぐるぐると頭をよぎる、不安。






「ビッキー・・・」




ふんわりと呼ぶ声。



やがてぎゅっと、あたたかな腕に包み込まれる。





どきどきするよ


「リウ・・・さん?」



そのまま静かな時間が流れる。








しばらくして、彼がぽつりと口をひらいた。


「・・・ごめん、なんて言ったら良いのかな。思い浮かばない・・・」

「え、え、・・・どう、したの?」


私はただオロオロするばかり。


だって、リウさんが泣きだしそうで

「何でもないよ」



耳元に感じる声








「ありがとう」






かすかなそれはとても暖かかった。





+++++






花咲く野原

揺れ動くそのさま



美しいと感じた事はあっても

それを夜空の星に見出したことは無かった







年中見つめるその景色の中に




広がりつづける光の花。





いわれてみれば確かにそんな感じがしてくるよ。











「これって、ずっと消えないで春があるってことだよね?」


「そうだね」







本当に・・・君といるとたくさんの事柄が、

感情が


暖かく、色彩を帯び始めるよ




それはまるで春のように。










だから―僕に言わせれば、ビッキーこそが。













消えない春












■ネコヤさんの一言■

春に無理矢理こじつけ作品。その名も「消えない春」。

はじめは
「お星様が花だとしたら・・・春って年中そこにあるってこと?消えない花かな♪」などと思っていたのに。
いつの間にか坊に乗っ取られ、かような作品となりました。

それにしても、ホウアン先生がいるのになぜトウタ君がいないのか謎ー。


■石猫のタワゴト■

お星さまは空のお花畑。
発想が美しいです〜さすがネコヤさんv
ビッキーの思考回路を熟知しておられますね!
リウさんの「消えない春」説もまた素敵 v
ビッキーってホント、春の女神様みたいですもんね〜
一緒にいればいつもここは春の国。



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