2002/04/13
苺 |
「あ、失敗しちゃったぁ」 ほえほえしたビッキ―の言葉とともに、彼女の近くにいたかつてのリーダー、トランの英雄であるナユキ・マクドールを巻き込んで、ビッキ―は春だといえまだ冷たいデュナン湖に落ちた。 ずぶ濡れになった二人が対岸にある本拠地に辿り着く頃には、太陽が随分と高い位置に昇っていた。 「あやや〜〜大丈夫、ナユキさん?」 「……まぁね。この季節に水泳をするはめになるとは思わなかったよ」 ビッキ―の心配を軽く流すと少年は少女の手を取って、強引に洗濯場へと連れて行く。そこで洗濯物を取り込んでいるヨシノに話し掛けると、取り込んだタオルを二人分受け取り、一つをビッキ―に投げやった。 漆黒の髪をまとめてある緑のバンダナを外しタオルで髪を拭きながら、バンダナを絞る。石床に黒い染みが出来る。その光景にボーッと見惚れているビッキ―に気が付いた。 「……早く拭いて、温もってきた方が良いよ。風邪ひかれちゃ困るからね」 「へえ?う…うん」 ナユキの不機嫌な口調に、しゅんとビッキ―は肩を落とした。 わわわ、どうしようナユキさん怒ってる……。 嫌われてるのかしらぁ……。 考えてみれば失敗は日常茶飯事、彼を見るといつも自分を睨んでる。 でも、意味無く人を嫌う人じゃないことは知ってる。嫌われてる原因と言えばこの『日常茶飯事』なのかも知れない。 ……とにかく謝らなきゃ。 ………くしゅん。 現リーダーから用意された客室に戻る途中、廊下でナユキは口元を抑えた。 少し悪寒がする。連日の遠征の疲労と今日のデュナン湖の水泳が決定打となって風邪をひいたらしい。不本意ではあるが、医務室へ行ってホウアンから風邪薬を調合して貰おう。できれば内密に。 特におっちょこちょいで、人一倍鈍くてお節介な相手。黒髪とコロコロと表情の変わる大きな勿忘草の青い瞳をした少女には知られたくない。多分…きっと嫌でも心配するだろうから。 ところが、その心配されたくない相手とばったり出くわしてしまった。普段冷静で表情をあまり崩さないナユキは、これ以上ないくらいに瞳を見開いた。 「ビ…ビッキ―!?」 「あれぇ、ナユキさん?ちょうど良かったぁ」 仔犬のように走り寄ってくる。にこにこと笑顔全開。 「はい、これっ!!」 目の前に突き出されたのはガラス皿に大量に盛られた木苺。 涼やかなガラス皿に盛られた瑞々しい木苺の量に圧倒されつつも口を開く。 「何……これ……」 「えへへ、ナユキさん前に好きだって言ったでしょ?」 「そうだけど……」 「私ね、一生懸命探したんだよ。ナユキさん頑固だし普通に謝っても『あ、そう』で終わっちゃうから、きちんと謝りたいの。ごめんなさい!」 本当にあっちこっち探し回ったのか、髪には木の葉が絡まり白い頬やら純白のローブには土埃で汚れていて、とても年頃の女の子とは思えない。 「……バカだな」 ぼそりと呟くとナユキはクスクス笑いをかみ殺す。 「はえ?」 ?マークを頭上に浮かべながら小首を傾げるビッキ―はいまいち分かっていない。 「君も僕も相当のバカだって事」 「はええっ、ど…どうして?ナユキさんはバカじゃないよ?」 なおも可笑しそうに笑うナユキに言い返す。 「それは、僕の為に泥だらけになる君もそうだけど、それを嬉しく思う僕も同じだって事さ」 「?それって……むぐっ」 差し出された大粒の木苺をビッキ―の口に放り込み、自分も食べる。 「ビッキ―の顔、木苺みたいに真っ赤だよ?ご馳走様」 「え?え?え?」 意地が悪そうに笑うと慌てるビッキ―を残しその場を去る。 エープリルフールは四月バカ。 たまには人間バカになってもいいんじゃない? END |
■石猫のタワゴト■ やっぱりビッキーは可愛らしいですよね〜vやることなすこと。 彼女と一緒なら、デュナン湖だろーがトラン湖だろうが墜落するのに不満はないでしょう、坊ちゃん? カッコ構わず夢中になって苺狩りしてるビッキーの姿を連想。 か…かわええ。 それでいて大量収穫してしまうのだから素晴らしい。 しかし。彼女のことだからヘビ苺とか混ざってたりして(笑)。 薄幸のフリッ苦あたりなら即死しそうだけど、坊なら平気かも。 ビッキーとともに運のパラメーター高いし。 |