2002/01/06

You're my sunshine









「あれぇ〜〜??ここにも居ないな〜」





 同盟軍の新年を祝うパーティーが終わった後で。見張りの兵士達以外の殆どが寝静まった頃、きょろきょろと辺りを見回し、城内を歩き回る少女がいた。白を基調とした、清楚な印象を抱かせる魔導師風の服、腰までの艶やかな黒髪。一見は大人しげな美少女でありながら、中身はうっかり者の、城の名物・天然うっかりテレポート娘、ビッキーである。


 その彼女が一体何を探しているかというと。



「大分探したのになぁ…マクドールさん、何処に居るのかな〜?」



 で、あった。そもそも何で、彼女が彼を探す羽目になったか。





 それは数時間前に遡る。










                            × × × × ×










「ねえ、ビッキー?僕とゲームする気、ない?」




 日付が変わり、新年パーティーも佳境となったその頃に。ごった返す人の中を、難無く通り抜けて彼女の傍にやって来たトランの英雄殿は、ちらりと辺りを確認してから、彼女の耳元でそう囁いた。幸せそうにデザートを頬張っていたビッキーは、唐突なそれにちょっとびっくりしたように瞬きして、それから不思議そうな顔で彼を仰いだ。




「?ゲーム?」

「そう、ゲーム。そんなに難しい事じゃないよ。日が昇る前にこの城の何処かに居る僕を見つけてくれればいい。もし、時間内に僕を見つけられたら、すっごく良い物をあげるよ?――ただし、テレポートは禁止。あと、皆にも内緒でね」



 どう?乗る?訊かれてほんの一瞬考えた後、ビッキーはこくこくと頷いた。



 テレポートは使えないし、内緒という事は人にも彼の居所を聞けない。しかも城は広いと条件は厳しいけれど、日が昇るまでにはまだまだ時間があるし、『難しい事じゃない』と言うからには、きっと分かりやすい所に居るのだろう。それに何より、『すっごく良い物』と言うのが、気になって仕方ない。マクドールがそう言うのだから、ホントにすごく良いものに違いないのだ。




「そう。じゃあ、ゲームはパーティーが終わってから。ちなみに部屋の中には居ないからね。――頑張ってね、ビッキー」





 マクドールはにっこりと笑うと、現れた時と同じように、あっという間に人込みの中に姿を消したのであった。










                          × × × × ×










 そしてその数時間後の、現在。





「う〜〜〜ん…何処なんだろう…??」




 部屋には居ないといったから、そろそろ見つかってもいいはずなんだけれど。でも廊下にもテラスにも階段にもホールにも、彼の姿は何処にも見えない。


(何処かに隠れてるのかな?でも難しくないって言ってたし……う〜〜ん…)



 何時もの己の定位置で足を止め、天井を見上げて溜め息を吐く。――白い。



(…寒いよね)



 自分は動き回っていてあまり気がつかなかったけれど。真冬の今は酷く寒い。夜明け前は、尚更。こんな中でずっと待っているのなら。







 いや――きっと待っているから。あの人は。










(見つけなきゃ)





 一刻も早く。日が昇るまで、もうそんなに時間は無い。もう一度、居そうな場所を……。










「……ビッキーか?何してるんだ?」
「!あ、フリックさん!テレポートですか??」




 階段上から彼女を不思議そうに見下ろすフリックにそう訪ねる。いや、とフリックは首を軽く横に振って、




「気配がしたから誰かと思ってな。……でも何だってこんな時間まで起きてるんだ?もう皆寝てるだろう?」
「マ…え〜〜〜と…ちょ、ちょっと……眠れなくて」





 マクドールを探してる、と言いかけて、内緒だった事を思い出し、慌てて誤魔化す。フリックはさして疑問をもたなかったようで、そうか、と頷くと、





「まあ、でも今日に差し支えるから、早めに寝た方がいいぞ。招待客の神愛(カナイ)の奴と違って、君は仕事があるんだからな」
「……マクドールさん…もまだ起きてるんですか?」


「ああ。朝日を見るとか何とか言って、屋上に来て……あ、ビッキー?」




 フリックさん有り難う、と横をすり抜けて駆けて行くビッキーの背を、フリックはしばし見やり。








「……っとに、昔から人使い荒いよな、あいつ」





 溜息混じりにそうぼやいたのだった。





                 × × × × ×





 エレベーターはもう停止していたので、出来るだけ足音をさせないように、階段を急いで上って。一気に5階を上がったせいでふらふらしながら、屋上のテラスに辿り着いたビッキーは、出迎えた人影に、ぱあ、と顔を輝かせた。





「マクドールさん!!!」
「やあ、お疲れ様、ビッキー」





 ぎりぎりセーフだね。微笑んで言いながら、己が包まっている毛布に、ビッキーを招き入れる。




「遅くなって、ごめんねっっ。寒くなかった?」
「少し。でも今は温かいから大丈夫」




 彼女を抱きしめながら、やっぱり人肌はいいよね〜と聞こえない位の小声で呟いたマクドールに、きょとんとして首を傾げたビッキーは、あ、と思い出したように少し頬を膨らませた。





「そうだ。マクドールさんずるいよ。最初来た時には、ここ居なかったのに」
「ああ、ごめんごめん。最初屋根の上にいたんだけど、見つけてもらえなかったから降りて来たんだ」

「来た時に声かけてくれたらよかったのに〜」
「ごめんごめん。――でも、それじゃあ、見たいもの見れなかったから」





 探して探して、ようやく辿り着いた時の、表情を。こんな時でもなければ見られない、彼女が己を散々探して、探し当てた時のその表情が見てみたかった。



 だからわざわざテレポートを禁じて。





 他の輩に見せたくないから、内緒にして。








 そうして、その結果。思惑通りに見せてくれた――至福の笑顔。










「???なぁに??」



 くっくっと嬉しそうに笑うマクドールを不思議そうに見る。マクドールは何でもないよ、と誤魔化すと、おいで、と彼女を慎重に屋根の上へと連れて行った。並んで腰を下ろし、見て、と水平線を指差す。




「………わぁ…」





 少しずつ少しずつ、姿を現す太陽。空と海がその色を映して輝き始める、長くて短いその時間。食い入るように見つめるその横顔を満足げに眺めながら、




「じゃあ、約束の『すっごく良い物』……この景色、君にあげるよ」




 その言葉が終わるか否や、ビッキーはびっくりしたように彼に視線を移した。





「えっっ!すっごく良い物、ってこれだったんだ!?」
「うん。――気に入らなかった?」
「ううん!有り難う、マクドールさん!!すごくすごく綺麗で素敵だよVV」







 今、他のどんな物を貰っても、きっと色あせてしまうくらいに。





「ホントに有り難う、マクドールさん」




 どういたしまして。と肩に回していた手で頭をひとしきり撫でた後。





「あとね、昔は余裕無かったけど……トランではね、年明けの最初の朝日に、願い事をする習慣があるんだよ。一年に一回だからね、流れ星にするより、効き目良いと思うよ」


 何かお願いしたら?





 そう言われて、お願い事がいっぱいあるらしいビッキーは、しばし「う〜〜んう〜〜ん」と悩んでから、初日に向かって拍手を打ち、何やらなむなむと唱え。それから願い事をするでもなく、楽しげに 彼女を見ているマクドールに向かって。




「マクドールさんは?お願いしないの?」
「もちろんするよ。――こっちの太陽にね」



 機会を逃したら年単位で見れないものだから、さぞかし効き目が良いだろうしね。







 おどけたように言って、ビッキーに向かってパンパンと拍手を打ち。













「これから先、何回でも君に逢えますように」










 呟くように、真剣な声でそう言った後。マクドールは彼女の額に、毛布越しに軽くキスをしたのであった。











                                                  END




■石猫のタワゴト■

ステキですねぇ〜vそして坊ちゃんカッコ良すぎますvv
作戦成功には周到な根回しと計算が必要であることを教えてくれます。
どこまでも余裕げな彼にうっとり。


You're my sunshine。キミは僕の太陽。
確かにハンパじゃない程、御利益ありそうなご来光ですねっ!
これはもう、坊ちゃんの願いは叶ったも同然?



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