TWINKLE NIGHT








世界が光に溢れる夜。

逢いたい人はたった一人。




























街を行く人の足取りも軽くなり、白い息さえも楽しいものに変わって行く。
幾度か雪を迎えた街並みは、そんな寒さにも負けないくらいに、明るく鮮やかに彩られていた。

振り返れば視界に入る、黄金の星を掲げた緑の木。

笑顔が奇跡を起こす夜。




























「え?ビッキーが居ない?」


同盟軍居城を訪れた彼を迎えたのは、思っても居ない事態であった。
いつも居る筈の、ホールの片隅。大鏡の前で、「ユクさん!今日は何処へ行くの?」と笑顔を向けてくれる少女の姿が無い。

代わりに、困った顔をした軍主と、呆れ顔の風使いが立っていた。

鏡にまで施されている赤と緑の華やかな装飾。
城を上げてのパーティにするつもりであったことが、一目で窺える。
けれど、彼女を呼びに来た所で、不在だということに気付いた―――というところか。

「君に会いに行くって言ってたけど………どうやら会わなかったみたいだね」

やれやれ、と溜息をつきながらルックが言う。
ユクは「僕に?」と二人に尋ねた。

「今日の朝、そう言って何処かへテレポートしてたらしいんです。だから、てっきりユクさんの所に居るんだと思ったんですけど…」

「会わなかったよ。グレミオには此処に来ることを言っておいたから、グレッグミンスターに飛んだなら、直ぐに戻って来るだろうし…」

なのに彼女は此処に居ない。
心配そうに鏡を見つめるリーと、再び溜息をつくルック。
原因は既に明らかであり、言葉にせずとも分かっている。

―――また、テレポートに失敗したのであろう。


「―――こんな日にまで、失敗しなくたって良いのに」

「彼女に奇跡は起こらなかったってことだろ」

「君はこんな日でも相変わらずみたいだけど」

「……君の落ち着き様もどうかと思うよ」



ルックの一言に瞳を細める。














―――落ち着いてなんか、いない。










冷静な振りをして、凄く酷く、怯えている。

彼女の姿が見えなかったとき、どんなに心が割れそうだったか。








―――知らないだけだよ。












「仕方ない。リー、皆のところに戻るよ」

「えッ?で、でもルックさん…」

一瞬浮かべられたユクの薄い表情に気付いて、ルックは身を翻した。


「ビッキーはユクが連れて来るから。―――だろ?」


困惑気味のリーを呼びながら、言葉の最後でユクに確認を求める。

其れに、応えないはずが無い。


「ビッキーは僕に会いに来るんだろう?…だったら、僕が探してあげなきゃね。何処かで迷子になってるかもしれないから」


遠くでいつもの笑い声が聞こえる。
開かれたままの扉の向こうに、冷たい風に乗って、沈み始めた夕暮れが見えた。
城の皆は、きっと目の前の少年を待っているだろう。



「…だからリー。安心して先に行ってて。直ぐにビッキーと戻ってくるから」


「で、でも…やっぱり僕も…」








「こら―――ッ!リ――――――!!!!皆待ってるんだから、早く早く―――ッ!!!!!」








渋るリーの意思を引っ張ってゆくかのように、ナナミが階段を駆け下りてきた。

すると、其処に居るユクとルックの姿も眼に入っていないのか、凄い剣幕で走ってきたかと思うと、リーの腕を引っ張って行ってしまった。




「リーも君のことを随分待ってたみたいだから、早く戻って来なよね」

「…え?」


残された二人だけのホールで、ぽつりと独り言のように呟いたのはルックだった。

彼にしては意外な言葉に、ユクは思わず聞き返すも、「それじゃ」と片手を上げて彼はナナミとリーの道を辿って行ってしまった。






今度こそ、確かに一人きり。




























風の吹き込む世界の果てに。



―――もしかしたら、君は居るかもしれないね。




















前髪を撫でてゆく幾多の淋しさは、何処からか来て。


そして、誰かを探して消えてしまう。



























―――君は何処に居るんだろう。





























「こんな夜に消えなくても良いのに」









カツン。







響く冷たさから逃れるように、前へ進む。














暖かい城から外へ出てしまうと、振り返らずには居られなかった。











奇跡を祝う、誰しもの声と。




空へと聳える、祈りを掲げた緑の木。









一番上には、夜空の中で一等明るい星が煌いていて。




この夕暮れが夜に変わる頃にはきっと、更に輝きを増すだろう。

































側に居ないと思うと、一層心は求め始める。










空に星が昇り、月が昇り、藍のベールで世界を隠し始めたから。


きっと、淋しがりの君は泣いてしまうよ。































何処へ走れば良いのか分からなかった。



けれど、走らなければならない。











―――君が必ず何処かに居るから。














この、奇跡の夜が終わる前に、逢いたかった、から。





































指先まで闇色に溶けて。


吐く息だけが、降る雪のように白い。





























祈りの光は、幾つも人の心に灯るけれど。



今、彼を包む世界は、こんなにも淋しくて。













光一つ無い夜に、小さく彼女の名を呼んだ。

















耳に残る祝いの詩。






















―――僕に空間を飛ぶ力があれば、迷わず飛んで行くのにね。




























心に何も映さない。


君のことしか残ってないから。


























―――ビッキー。









































広い草原の下、たった一人。







呟きは白く溶けて。






いくつもいくつも。



彼の周りで光を放った。
































足を止めて、瞳を上げると。










指先に触れる、白いキセキ。








ひらひら、と。



























「…………ゆき…?」




















いつしか、瞬きの星は、闇の吐息に変わっていた。




















舞い降りては消えてゆく、一瞬の魔法。





















「こんなキセキは、いらないよ」






















浮かべた筈の微笑みは、一瞬の後に切なさに変わる。















消えてゆくだけの、刹那の奇跡より。









この手に触れる、君に居てほしい。


































―――今夜が奇跡の夜だというなら。

















聖なる白に、願いを乗せて。




































「―――ユクさん!」

























視界に降り行く白い奇跡の向こう側に。






それよりもっと、白い光。






















「ビッキー!」





















縺れる足。




何度も伸ばす腕に触れて。
























見つけたのは、迷子の君。





















「えへへ、やっと逢えたね」








「全く。何処へ行ってたんだよ。皆心配してたの、知ってるかい?」
















―――僕が心配してたのを、知ってるのかい?















一人きりで淋しかった筈なのに。



















―――どうして僕の方が泣いてしまいそうなんだろう。




























「淋しくなかった?」



















僕に逢うために。



君は何処に居たんだろう。














雪の冷たさが、彼女のぬくもりを消してしまわないように、強く強く抱き締める。

















「淋しくなかったよ。ユクさんのこと、ずっとずっと考えたから。今日はクリスマスだから、どうしても逢いたかったの」























―――そんなの僕だって同じだよ。






























呼んでくれたら、いつでも行くのに。























「ねえ、ユクさん、雪降ったね。こういうの、ホワイトクリスマスって、言うんだって。ナナミちゃんに教えてもらったの」

































「それよりもっと、奇跡を見たよ」


























白い雪が、導いてくれた、ひとつの奇跡。


















―――少しだけ、感謝したい。



















聖なる夜に。
















少しだけ。





































―――今度は、迷子にならずに、飛べる?


















そう囁いたら、消えることの無い笑顔で。













「ユクさんが居るから。大丈夫だよ」













































何があっても、消えない君の笑顔こそが。































何よりも、奇跡。



























■ふよさんのヒトコト■

ギャグで落とすかシリアスで落とすか。<落とすンかい?!
悩みましたがこんな感じで。え?これギャグじゃないですよッ?!(笑)

坊ビキ研究所のクリスマス企画に参加させて頂いた一品です〜vあ、あんまりクリスマスっぽくないなあ(汗)。
ホントは、新年ネタにしようかと思ったのですが……それはあまりにもあまりなネタ(笑)だったので、差し替え差し替えv

因みにタイトルはアレです。ええ、アレですよ(ニヤリ)。
話のネタもそこからですが(笑)。すいませんすいません、好きなんです〜!あわわ。

それでは、坊ビキ、クリスマスでしたッv
ビッキー何処に行ってたんだろう…(笑)。


■石猫のタワゴト■

手をかざしてみても奇跡はもう起こらない
君を捜さなくちゃ、今夜中に……デスねー!

私も好きです、ははは。ビバ!TWINKLE NIGHT!←バカ
なにげにCD聴きながらコレ、書いてます。
こーきたら次はいよいよELECTRIC PROPHETデスカー!?

……私もバカバカだ。

それにしてもユクさんってばベタ惚れですね〜ステキ。
そんな彼に、
「ユクさんがいるから大丈夫だよ」
これぞ最強の殺し文句!すごいぞビッキーv


究極の浪漫てぃっく坊ビキに乾杯v
男は追っかけさせるぐらいがちょうどいい。……至言だ。


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