■ TWINKLE NIGHT ■
世界が光に溢れる夜。 逢いたい人はたった一人。 街を行く人の足取りも軽くなり、白い息さえも楽しいものに変わって行く。 幾度か雪を迎えた街並みは、そんな寒さにも負けないくらいに、明るく鮮やかに彩られていた。 振り返れば視界に入る、黄金の星を掲げた緑の木。 笑顔が奇跡を起こす夜。 「え?ビッキーが居ない?」 同盟軍居城を訪れた彼を迎えたのは、思っても居ない事態であった。 いつも居る筈の、ホールの片隅。大鏡の前で、「ユクさん!今日は何処へ行くの?」と笑顔を向けてくれる少女の姿が無い。 代わりに、困った顔をした軍主と、呆れ顔の風使いが立っていた。 鏡にまで施されている赤と緑の華やかな装飾。 城を上げてのパーティにするつもりであったことが、一目で窺える。 けれど、彼女を呼びに来た所で、不在だということに気付いた―――というところか。 「君に会いに行くって言ってたけど………どうやら会わなかったみたいだね」 やれやれ、と溜息をつきながらルックが言う。 ユクは「僕に?」と二人に尋ねた。 「今日の朝、そう言って何処かへテレポートしてたらしいんです。だから、てっきりユクさんの所に居るんだと思ったんですけど…」 「会わなかったよ。グレミオには此処に来ることを言っておいたから、グレッグミンスターに飛んだなら、直ぐに戻って来るだろうし…」 なのに彼女は此処に居ない。 心配そうに鏡を見つめるリーと、再び溜息をつくルック。 原因は既に明らかであり、言葉にせずとも分かっている。 ―――また、テレポートに失敗したのであろう。 「―――こんな日にまで、失敗しなくたって良いのに」 「彼女に奇跡は起こらなかったってことだろ」 「君はこんな日でも相変わらずみたいだけど」 「……君の落ち着き様もどうかと思うよ」 ルックの一言に瞳を細める。 ―――落ち着いてなんか、いない。 冷静な振りをして、凄く酷く、怯えている。 彼女の姿が見えなかったとき、どんなに心が割れそうだったか。 ―――知らないだけだよ。 「仕方ない。リー、皆のところに戻るよ」 「えッ?で、でもルックさん…」 一瞬浮かべられたユクの薄い表情に気付いて、ルックは身を翻した。 「ビッキーはユクが連れて来るから。―――だろ?」 困惑気味のリーを呼びながら、言葉の最後でユクに確認を求める。 其れに、応えないはずが無い。 「ビッキーは僕に会いに来るんだろう?…だったら、僕が探してあげなきゃね。何処かで迷子になってるかもしれないから」 遠くでいつもの笑い声が聞こえる。 開かれたままの扉の向こうに、冷たい風に乗って、沈み始めた夕暮れが見えた。 城の皆は、きっと目の前の少年を待っているだろう。 「…だからリー。安心して先に行ってて。直ぐにビッキーと戻ってくるから」 「で、でも…やっぱり僕も…」 「こら―――ッ!リ――――――!!!!皆待ってるんだから、早く早く―――ッ!!!!!」 渋るリーの意思を引っ張ってゆくかのように、ナナミが階段を駆け下りてきた。 すると、其処に居るユクとルックの姿も眼に入っていないのか、凄い剣幕で走ってきたかと思うと、リーの腕を引っ張って行ってしまった。 「リーも君のことを随分待ってたみたいだから、早く戻って来なよね」 「…え?」 残された二人だけのホールで、ぽつりと独り言のように呟いたのはルックだった。 彼にしては意外な言葉に、ユクは思わず聞き返すも、「それじゃ」と片手を上げて彼はナナミとリーの道を辿って行ってしまった。 今度こそ、確かに一人きり。 風の吹き込む世界の果てに。 ―――もしかしたら、君は居るかもしれないね。 前髪を撫でてゆく幾多の淋しさは、何処からか来て。 そして、誰かを探して消えてしまう。 ―――君は何処に居るんだろう。 「こんな夜に消えなくても良いのに」 カツン。 響く冷たさから逃れるように、前へ進む。 暖かい城から外へ出てしまうと、振り返らずには居られなかった。 奇跡を祝う、誰しもの声と。 空へと聳える、祈りを掲げた緑の木。 一番上には、夜空の中で一等明るい星が煌いていて。 この夕暮れが夜に変わる頃にはきっと、更に輝きを増すだろう。 側に居ないと思うと、一層心は求め始める。 空に星が昇り、月が昇り、藍のベールで世界を隠し始めたから。 きっと、淋しがりの君は泣いてしまうよ。 何処へ走れば良いのか分からなかった。 けれど、走らなければならない。 ―――君が必ず何処かに居るから。 この、奇跡の夜が終わる前に、逢いたかった、から。 指先まで闇色に溶けて。 吐く息だけが、降る雪のように白い。 祈りの光は、幾つも人の心に灯るけれど。 今、彼を包む世界は、こんなにも淋しくて。 光一つ無い夜に、小さく彼女の名を呼んだ。 耳に残る祝いの詩。 ―――僕に空間を飛ぶ力があれば、迷わず飛んで行くのにね。 心に何も映さない。 君のことしか残ってないから。 ―――ビッキー。 広い草原の下、たった一人。 呟きは白く溶けて。 いくつもいくつも。 彼の周りで光を放った。 足を止めて、瞳を上げると。 指先に触れる、白いキセキ。 ひらひら、と。 「…………ゆき…?」 いつしか、瞬きの星は、闇の吐息に変わっていた。 舞い降りては消えてゆく、一瞬の魔法。 「こんなキセキは、いらないよ」 浮かべた筈の微笑みは、一瞬の後に切なさに変わる。 消えてゆくだけの、刹那の奇跡より。 この手に触れる、君に居てほしい。 ―――今夜が奇跡の夜だというなら。 聖なる白に、願いを乗せて。 「―――ユクさん!」 視界に降り行く白い奇跡の向こう側に。 それよりもっと、白い光。 「ビッキー!」 縺れる足。 何度も伸ばす腕に触れて。 見つけたのは、迷子の君。 「えへへ、やっと逢えたね」 「全く。何処へ行ってたんだよ。皆心配してたの、知ってるかい?」 ―――僕が心配してたのを、知ってるのかい? 一人きりで淋しかった筈なのに。 ―――どうして僕の方が泣いてしまいそうなんだろう。 「淋しくなかった?」 僕に逢うために。 君は何処に居たんだろう。 雪の冷たさが、彼女のぬくもりを消してしまわないように、強く強く抱き締める。 「淋しくなかったよ。ユクさんのこと、ずっとずっと考えたから。今日はクリスマスだから、どうしても逢いたかったの」 ―――そんなの僕だって同じだよ。 呼んでくれたら、いつでも行くのに。 「ねえ、ユクさん、雪降ったね。こういうの、ホワイトクリスマスって、言うんだって。ナナミちゃんに教えてもらったの」 「それよりもっと、奇跡を見たよ」 白い雪が、導いてくれた、ひとつの奇跡。 ―――少しだけ、感謝したい。 聖なる夜に。 少しだけ。 ―――今度は、迷子にならずに、飛べる? そう囁いたら、消えることの無い笑顔で。 「ユクさんが居るから。大丈夫だよ」 何があっても、消えない君の笑顔こそが。 何よりも、奇跡。 |
■ふよさんのヒトコト■ ギャグで落とすかシリアスで落とすか。<落とすンかい?! 悩みましたがこんな感じで。え?これギャグじゃないですよッ?!(笑) 坊ビキ研究所のクリスマス企画に参加させて頂いた一品です〜vあ、あんまりクリスマスっぽくないなあ(汗)。 ホントは、新年ネタにしようかと思ったのですが……それはあまりにもあまりなネタ(笑)だったので、差し替え差し替えv 因みにタイトルはアレです。ええ、アレですよ(ニヤリ)。 話のネタもそこからですが(笑)。すいませんすいません、好きなんです〜!あわわ。 それでは、坊ビキ、クリスマスでしたッv ビッキー何処に行ってたんだろう…(笑)。 ■石猫のタワゴト■ 手をかざしてみても奇跡はもう起こらない 君を捜さなくちゃ、今夜中に……デスねー! 私も好きです、ははは。ビバ!TWINKLE NIGHT!←バカ なにげにCD聴きながらコレ、書いてます。 こーきたら次はいよいよELECTRIC PROPHETデスカー!? ……私もバカバカだ。 それにしてもユクさんってばベタ惚れですね〜ステキ。 そんな彼に、 「ユクさんがいるから大丈夫だよ」 これぞ最強の殺し文句!すごいぞビッキーv 究極の浪漫てぃっく坊ビキに乾杯v 男は追っかけさせるぐらいがちょうどいい。……至言だ。 |