2002/06/29
■ 地上の星 ■ |
朝のカフェテラス。 皆が優雅に朝食をとっているとデュナン城名物姉弟の片割れが良く通る大きな声で弟であり、同盟軍リーダーであるヒナタに向かって何やら叫んでいた。 「あ!も〜茶葉がない…ごめんね、ヒナタぁ」 「ついにこの日がきたんだ…別にいいよ、しょうがないしね」 ナナミの言葉にある程度覚悟していたような口ぶりでヒナタは言う。 温めてあるティーカップに最後の一滴まで几帳面にヒナタは注いでいった。 「う〜でもでもっ!!これキャロの紅茶だからもう手に入んないんだよね〜…」 項垂れたナナミに後からちょんちょん…と肩を叩く者がいた。 「もぉ〜誰よぅ?あ、ビッキーちゃん?」 「えへへへ〜おはよ〜♪どうしたのぉ?元気ないねぇ〜???」 「ここに来る時に持ってきたお茶がね…」 ナナミがぽややんとしているビッキーにごちる。 「ふ〜ん…そうだぁ、私が買ってきて上げる〜♪」 「わあぁ♪ほ、ほんとぉ〜??」 ニコニコとご機嫌なビッキーと、嬉しそうなナナミ。 「あ、でも…ビッキーちゃんじゃ危険だよ」 「うふふ〜平気だよ〜♪ちょちょいと行ってくるし〜」 「でも、ビッキー…君みたいな可憐でカワイイ女の子が、野獣の餌になりに一人だけ行くなんて!行くなら僕も…わっ!!」 そっとビッキーの手を握り何やら口説き始めたヒナタに、何処からともなく棍が振り下ろされる。が、ヒナタはそれを抜群の反射神経でトンファーで上手くかわした。 「あ、居たの。ナユキさんっ☆」 「さっきからね」 見えない火花が二人の間でバチバチと散っていた。両者ともにこやかに笑っているが目が笑っていない。 この場で前リーダーの彼をよく知る者が居れば、この笑みを向けられたらいっそ、死にたくなるだろう。 「あ、ナユキさんだ〜♪」 ナユキだと確認をするとビッキーは、ほやや〜んと微笑って彼の前までやって来る。 「久し振り…」 「うん、ホントだね♪」 心の底から嬉しそうにビッキーが笑う。 表にこそ現れないが、ナユキは彼女の笑顔が好きだった。 「キャロ、行くんだろう」 「そだよ。お使いなの〜♪」 ビッキーの返事を一旦聞くとナユキは先程まで話をしていたナナミに向き直る。 「僕も、一緒に行く」 「ナユキさんも行ってくれるんだね♪いいなぁ、ビッキーちゃん」 「えへへ、いいでしょ〜♪」 ナナミにそういわれてご機嫌な彼女。 分かってるのか、分かってないのかビッキーはいつもの調子だ。 当のナユキは当然ビッキーの事を心配して行くのだが、超が幾つあっても足りないほど鈍感なこの少女は…。 理由なんてきっと分からないだろうな、と思う。そう考えると思わず顔が緩んでしまうのだが、人前では決して悟られたくない。 「で、紅茶の特徴とか…」 「そうそう。そうだね♪えーっと『その味は口当たりは滑らかで柔らかく…例えるなら朝露をたっぷり含んだ白薔薇の香りの…甘美な味わい』らしいの〜」 腐れ縁がいれば『なんだそりゃあ!!』と叫ぶような言い回しのお茶である。それを毎朝飲んでるらしい。 「訳を頼む…」 ナユキがナナミに訳を頼むとにっこり笑ってナナミは説明し始める。 「えーっとねぇ…甘すぎるかなと思った味が、後からさっぱりして飲みやすい味って感じかな」 「ふーん…行こう、ビッキー…」 「ほえ?」 大体の説明を聞いてると、目的の物が分かってきた。ナユキはビッキ―の手を引いて、横抱きに抱えると突然の出来事に目をぱちくりさせている少女と共に闇を渡った。 帰ってくる頃には、太陽が落ちて城の外は暗闇に包まれており、空にはたくさんの星が夜空を彩っていた。 「むう〜…ナユキさん、私がテレポートするって言ったのにぃ〜」 「…今日中に戻りたかったから」 あっさりとビッキ―の小言を一蹴する。なおも引き下がらないビッキ―にナユキは彼女の両頬を軽く引っ張った。 「怒らない。お茶も買えただろう」 「そうだけど〜…あ、見て見て〜」 ビッキ―が指差した方向に目をやると、夏の夜空に一際オレンジ色に輝く星と青く輝く星が重なって見えた。 「綺麗だね〜。ね、そう思うでしょ〜?」 「まあ、ね…それはアルビレオ。有名な二重星だね…」 「あひる…?ビデオ…?なに??」 小首を傾げて不思議そうにしているビッキ―に難しい事は抜きにする。 「僕たちの目から見たら、重なって見える星だよ。『天上の宝石』と呼ばれるぐらい綺麗な星さ」 「へええ〜あのオレンジ色のお星さまって、ナユキさんの瞳の色みたい」 感心したようにビッキ―が指をさして言う。 「そうかな…」 「うん、それでね〜あの青いのが私なの〜」 思わず吸い込まれてしまいそうな、キラキラしたビッキ―の青い瞳。本当に宝石のようだと妙に納得してしまう。 「…でも、だめだな」 「どしたの?」 近くて重なって見えるアルビレオと言う星は、お互いの星との間は気が遠くなるほど遠い星だ。人の目には重なって見えても、実際にその星は遠い。 「それじゃあ、僕とビッキ―は永遠に離れ離れだね」 「ええっ!?そんなのいやだよぉ…」 見る見るうちにビッキ―の瞳から透明な雫が溢れていく。 泣かせるつもりではなかったのだが…。 自然にビッキーの涙を指で拭ってやる。 惚れた弱みと言うか、泣き顔より彼女は笑っている方が良い。 「…僕たちは星じゃない。呼べば、嫌でもビッキ―が来てくれるんだろう」 僕の言葉にコクコクと頭を縦に振ってビッキ―が応える。 「そう。だったら、このまま攫ってしまおうかな」 「はえ!!?」 「冗談だよ」 意地が悪そうに笑う僕と予想通りビッキ―の驚いた顔。 それに満足して、そわそわしている彼女の前に手を差しだす。 「帰ろう。みんなが待ってる」 なかなか手を差し出さないので「置いて行く」と言ったら、ビッキ―は僕の手を必死になって繋いだ。 僕の手には星がある。 どんなに輝く星にも負ける事のない地上の星が。 私の手には星がある。 どんなに輝く星にも負けない地上の星が。 「私はずっとずっと近くに居てあげる。傍に居るからねっ!!」 ナユキさんは微笑うだけだけど。 どんなに遠くても、その手を絶対に離さない。 私は心の中で、今そう決めた。 END |
■石猫のタワゴト■ 普段はボケボケってるけれど、いざとなったら! ……やはりボケボケかもしれない。 自分の心に素直で、いつも体当たり一直線。 やはりカワイイです、ビッキー。 程良くヒネた坊となんてお似合いなんでしょう!←おいおい 青玉と黄玉の連星が、輪になって静かに回るように。 ずっとずっと永遠に、一緒にいられたらいいですね。 ナイスカップル万歳! |